吉田さらさの「明日がちょっと幸せになる お地蔵さまのことば」

寺と神社の旅研究家吉田さらさが10年間の旅を通して撮りためた石仏、石の神様像の写真を、お言葉ともにお届けします。

苦ばっかりなんて言っちゃあおしめえよ

俺は基本的には釈迦如来だが、、
このごろでは、なぜか「寅さん」
と呼ばれることが多くなった。
顔付きやポーズが、どことなく、
「それを言っちゃあ、おしめえよ」と
言っているように見えるんだと。

「それを言っちゃおしまい」なのは、
「それ」があまりにも本当であるため、
なるべく見ないようにして暮らした方が
楽ちんだからだ。
中でももっともおしまいなのは、
「人生は苦ばっかり」という言葉である。

釈迦である俺は、そこからスタートして、
偉大なる悟りを得たのだが
あんたら普通の人間は、
「苦」と向かい合うばかりだと、
辛すぎて生きて行かれないようだ。
だからって、寅さんみたいに、
ちょっと我慢できないことがあると
すぐどこかに行ってしまうのは問題だがな。

それはそれとして、
このごろでは、俺も年を取って鷹揚になって来たのか、
人生は苦ばっかりでも、
桜が咲く日は例外だと思うようになった。
寅さんならこう言うね。
「何と言うかな、あー生まれてきてよかった。
そう思うことが何べんかあるだろう。
そのために人間生きてんじゃねえか?」

東京都調布市深大寺 釈迦如来(?)
指が破損しているので確定はできないものの、
おそらく釈迦如来と推定。
この像は、現場で見ている時から、
四角いお顔と眉間のほくろが、
寅さんにそっくりとわたしは思いました。
もしも寅さんとお釈迦様が出会ったら、
お釈迦様の方が寅さんのペースに乗せられて、
「人生はそんなに苦ばっかりでもなかった」と言いながら、
寅さんの片思いの相手をさらって行くのかも、
とも思いましたっけ。

ちなみに
最後の「何と言うかな……」は、
第39作「寅次郎物語」の中のセリフ
マドンナは、秋吉久美子さんでした。

 

f:id:sarasa77:20061224001352j:plain